閃光のように 第6 話


スザクを助けだした!
早速仲間にしようと説得した!
だけどプロポーズと勘違いされた!
その上顔も見られた!
さらに服まで脱がされた!
その結果こうなりました。

「ううっうぐっ・・・ううう」
「よしよし、怖かったな、もう大丈夫だ、私がいるからな」

新たなトラウマを心に刻んだルルーシュが泣きじゃくるのを、私はそっと抱きしめてその頭をなでながらあやした。
まるでクロヴィスの前で泣いた時のように、我を忘れて泣き続けるルルーシュを見て、C.C.はある事に気がついた。
これはあれだな。
久々に笑った私が笑い上戸になったように、久々に泣いたルルーシュは泣き上戸になってしまったらしい。
・・・まあ私たちは酒を飲んでいるわけではないが、イメージとしてはそんな感じだ。
さてさて、どうやって落ち着かせよう。

そんな二人を見ているのは一人の男。
当然スザクだ。
床に座り込み、緑髪の女性に抱きつき泣き続けるルルーシュに、スザクはどうしたらいいんだろうとオロオロし続けていた。
まさかあのルルーシュが本気で泣きだすと思わなかった。
嫌がる相手の服を無理やりなんて、怯えられても仕方がない事ではあるが、脱がしたと言っても、暴れるルルーシュを抑えて、どうにかパイロットスーツらしき物のチャックを下げた程度で・・・それ以上はC.C.が邪魔をしたから無理だったから、決定的な物は何も見えなかったし、そこまで泣く事ではないと・・・思う。
男だって言うなら余計に問題ないはずだ。
だって僕たち親友だろ、ルルーシュ!
ってか、婚約者だよねちょっと前から!
それにこれは、明らかに女性の体なのに男だって言い張るルルーシュが悪いのであって・・・でも、ちょっと・・・やり過ぎただろうか。
僕、ルルーシュを押さえてた時どんな顔してたんだろう・・・。
そんなに怖い顔をしてたんだろうか。
考えたくはないけど、嫌われたかもしれない。
・・・嫌われた?
ルルーシュに?
僕が?
ようやく再会したのに?
命がけで救出してくれた上にプロポーズまでしてくれたのに・・・愛想つかれた?
えええええ!?
それは駄目!嫌だ!!
ルルーシュは僕の嫁!!
だれにも渡さない!
でもでも、今ので嫌われてたら・・・ううう・・・どうしよう・・・ううっ。

「ううう・・・ううっ・・・ぐすっ」
「って、何でお前まで泣きだすんだくるくる!!」

お前は慰めないからな!うざいぞ!

「うううう。だって、だって・・・ううっぐすっ」

だってルルーシュに嫌われた!!
うわあぁぁぁぁぁぁぁっ!と、盛大に泣き始めたスザクにC.C.は冷たい眼差しを送っていると、その泣き声に我に返ったのか、今までC.C.に縋りついていたルルーシュがハッと顔を上げた。
ハンカチで涙をぬぐいながら、一瞬ここはどこだ?と言いたげに、きょとんとした顔で辺りをも回した後、泣き声の方に顔を向けた。
そこには拘束衣を着て体育座りをし、膝に顔を埋めて泣いている男が一人。

「スザク!?」

慌てた様子で立ち上ったルルーシュはスザクへと駆け寄った。
どうやら泣いている間は完全に周りが見えなくなっていたようで、ルルーシュはスザクが泣いている理由が解らず、スザクの正面に膝をつくと、オロオロと困惑しながらスザクの肩に手を置き話しかけた。

「どうしたんだスザク、何処か痛いのか?C.C.に何か言われたのか?」
「うううっ、うっ、うっ」
「C.C.、お前何をしたんだ!」

スザクがこんなに凹むなんて、魔女の仕業に違いない!!

「何もしてないぞ?私も突然泣き出したくるくるに驚いている所だ」

というかお前、そいつの泣き声で正気に戻ったのか?
それはそれで面白くはないぞ。

「別にそいつがウザイとか、ブリタニア語を基礎から覚えなおして来いとか、泣けば許されると思っているのかとか、この性犯罪者とか、女性の敵とか、そんなこと一つも言ってないからな」
「うわああああぁぁぁぁ」

どう考えても嫌われる要素しかないじゃないか!
スザクはますます泣きだした。

「C.C.もういい黙れ!スザク、泣くな。俺はもう怒ってないからな?そんなに泣いては、いい男が台無しだぞ?」

な?
ルルーシュはナナリーとスザク限定の優しい声でそう言いながら、スザクのふわふわ(ルルーシュ談)の髪をなでた。
くっ、手袋が邪魔だ。
このふわふわな髪を直接触りたい!堪能したい!
と、思っている事は顔には出さず、慈愛の笑みをスザクに向ける。
ルルーシュの優しい声に誘われるように、スザクはのろのろと顔をあげた。
それでなくても童顔なのにさらに幼く見えるぐらい涙でぐしゃぐしゃになっているスザク顔をルルーシュはハンカチで拭くと、スザクは縋るようにルルーシュの手を取った。

「ルルーシュ、うう、うっ」
「ん?どうした?」
「僕の事、嫌いにならないで!」

うるうると両目に涙を溜め、上目づかいで縋りついてくるスザクはまさに主人に叱られた犬の姿!
犬派のルルーシュには効果テキメンだ!

「どうしてお前を嫌いになるというんだ?」

お前はおかしなことを言うな。

「ホント?嫌いになってない?」
「ああ、なっていないよ」

流れ落ちる涙を拭き取りながら、ルルーシュは頷いた。

「じゃあ・・・じゃあ、僕の事、好き?」

うるうるとした目で、首を傾げながら聞いてくるのは反則だと思う。
ああ、俺のスザクは相変わらず可愛いな!
ここにナナリーもいれば完璧なのに!
ん?ナナリーの横に立つスザク?
はっ!それはまさにナナリーの騎士の姿!
この二人を並べないなんてあり得ん!
寧ろ俺の理想郷の象徴になるだろう!
などという事を考えながらルルーシュは愛情に満ちた、それはそれは美しい笑みを向けた。泣いたことで目元も頬も赤く染まった状態でのその笑みは破壊力抜群だった。

「当たり前だろ?」

その笑みを向けられたスザクは、一瞬息をのんだ後、顔を赤く染めると、ルルーシュにガバリと抱きついた。

「ルルーシュ!!」
「まったくお前は、相変わらず泣き虫だな」

今まで自分も泣いていた事は棚に上げ、優しく笑いながらスザクを抱きとめた。
実はルルーシュは昔からスザクを手のかかる弟のように感じていた。
つまりシスコンルルーシュは同レベルの愛情をスザクにも注いでいるのだ!
理想の女性は最愛の妹ナナリー。
だから理想の男性と聞かれれば当然スザク。
そんな思考のルルーシュがスザクを甘やかさないはずがない。
だが、よしよしと、泣きじゃくるスザクの頭を幸せそうに撫でていたのは最初だけ。
突然ルルーシュは顔をひきつらせ、その撫でている手をピタリと止めた。
イライラしながらその様子を見ていたC.C.はどうしたんだと首をかしげた。
次の瞬間。
ルルーシュは一瞬で顔を赤くした。

「ほわあぁぁぁぁぁ!?す、す、スザク!?」
「ん、なに?」

ルルーシュの胸に顔を埋めたままのスザクは、どうしたの?とたずねた。

「す、スザク!な、なにを!?」

顔を赤く染め、動揺した様子のルルーシュに、C.C.は慌てて駆け寄った。
そして、ピクリと口元をひきつらせた。
ルルーシュに泣きながら抱きついたスザクは、チャックが下げられたままの服の中に手を滑らせ、ルルーシュの体を撫でまわしていたのだ。
しかもC.C.からは死角になる方の手を。
もう片方の手は、逃げられないようにとしっかりルルーシュの腰に回している。
さわさわと、スザクの手がルルーシュの服の中でうごめく。

「ちょ、待て、スザク!?」

どこを触っている!!
馬鹿、こら、やめろ!!

「ん~おかしいなあ、さっきまで間違いなく女の子の骨格だったのに、今はまちがいなく男の子だよねぇ」

さわさわ。
うん、間違いない。

「ほわぁぁぁ!?し、C.C.っっ!!」

あらぬ場所を触られ、ルルーシュは涙目になりながら助けを呼んだ。
眉間に皺を寄せたC.C.は、どこで拾ってきたのかビール瓶を思いっきりスザクの頭めがけて振りおろした。

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